ガンジスの河口に広がるデルタの国「バングラデシュ」(Bangladesh:বাংলাদেশ)
バングラデシュとはベンガル人の国の意味。カルカッタ(コルカタ)のあるインドの西ベンガル州と民族や文化は同じです。
人とリキシャでごった返すダッカの町と、川の国「バングラデシュ」の船旅をご紹介します。
今回は「バゲルハットのモスク都市」です!
クルナからバスに乗って「バゲルハットのモスク都市」へ
クルナの街
「バゲルハット」には15世紀に建立されたモスクがいくつも残っていて、それらは世界遺産にも登録されています。
バゲルハットは、クルナから南東へ約20kmのところにあります。私は、クルナに着いた翌日、バゲルハットへと向かいました。
クルナの街外れにある「ルプシャ・ガット」の船着場まではリキシャで約10分ほど(10TK:21円)。
ルプシャ・ガットから向こう岸の「ルプシャ」までは渡し舟が出ていて、それに乗ります。
渡し船は、屋根のない一枚の鉄板のような船でした。その上に何台かの車と大勢の人々が載っていました。
やってきた人と物が降り切ると、私たちは船に乗り始めました。そして、ひと通り人と物を載せ終わると、鉄板船はゆるゆるとルプシャヘと向けて動き出していきました。
茶色のルプシャ川を静かに進む鉄板船。しばらくすると、そのうち向こうからこちらと同じような鉄板船が近づいてくるのが見えてきました。色んなものを山積みにした鉄板と鉄板がゆっくりとすれ違います。
鉄板の上に突っ立ってお互いの鉄板を物も言わずに眺め合う人々。何だか妙におかしな光景でした。
ルプシャに渡ると、そこには何台ものバスがひしめきあっていました。私はバゲルハットへと向かうバスを探します。
「バゲルハット、バゲルハット?」とそれぞれのバスの客引きに訊いて回ると、ほどなくバゲルハット行きのバスを見つけることができました。料金は20TK(42円)。
私はそのバスに乗り込み、20分ほど掛けてバゲルハットへと向かいました。
バゲルハットの「シャイト・ゴンブズ・モスジット」
バゲルハットの「シャイト・ゴンブズ・モスジット」
バスを降り、モスク群のある地域まで田舎道を歩いて行きます。
緑に包まれた田舎の風景。椰子の木がゆらゆらと揺れ、鳥の鳴き声があちこちから聴こえてきます。黄金のベンガルと称されるバングラデシュの風景です。
のどかな道をのんびりと歩いていくと、緑の芝生の中にレンガ色の平べったい建物が現れました。
「シャイト・ゴンブズ・モスジット」、1459年に建造された茶色のレンガ造りの古い建物です。
「シャイト・ゴンブズ」とは60のドームという意味だそうで、平べったい屋根の上には60の小ドームと17の大ドームが載せてありました。
建物の四隅にはずんぐりとした背の低いミナレットがあり、正面にはいくつものアーチ門が連なっています。
シャイト・ゴンブズ・モスジットと子供たち
モスクの中に入ると世界は一変します。60本もの白い石柱が空間を埋め尽くし、それらの上部には無数のアーチが掛かっています。シンプルで幾何学的なその景観は、外観のレトロさとは裏腹に何か近未来的なイメージを感じさせました。
このモスクは世界遺産に登録されているにもかかわらず、観光客の姿をほとんど見かけませんでした。地元の人の姿もあまり見かけません。
数人の男女が中に入って祈っているだけで、モスクは閑散としていました。
建物の前に広がる緑の芝生には、上半身裸の少年たちがぶらぶらと遊んでいました。
彼らは私の姿を見つけると、写真を撮ってくれとせがんできました。
カメラを構えます。少年たちはお互いに肩を組み、「ニッ!」と笑いました。
青々とした芝と渋い赤レンガのモスクをバックに、上半身裸の子供たちがファインダーに収まりました!
「マジャール・カン・ジャハン・アリ」と「ナイン・ドーム・モスジット」
マジャール・カン・ジャハン・アリ(カン・ジャハン廟)
シャイト・ゴンブズ・モスジットから2kmほどぶらぶらと歩いていくと、「マジャール・カン・ジャハン・アリ」(カン・ジャハン廟)があります。
「カン・ジャハン」は塩害に悩まされるこの土地を開拓し、都市や貯水池を造ったとされる聖人です。
建物はシャイト・ゴンブズ・モスジットと同じように渋い赤レンガで造られています。正方形の建物の上に大きな丸いドームがひとつ乗っかっていて、内部にはカン・ジャハンの棺がありました。
地元では彼はかなり崇拝されているようで、私が訪れた時も何人かが棺に祈りを捧げていました。
ナイン・ドーム・モスジット
マジャール・カン・モスジットの西側には「ナイン・ドーム・モスジット」があります。
文字通り、9つのドームを持つ無骨なモスクです。
椰子の木の森の中に佇むレンガ造りのモスク。ここにも人の姿はほとんどありませんでした。
タクル池
マジャール・カン・モスジットとナイン・ドーム・モスジットの向こう側には「タクル池」という貯水池があります。
かなり広大な貯水池です。この池も塩害と戦い、この地を干拓したカン・ジャハンが造ったものなのでしょう。
池の前にある石段の上で、地元の人々駄弁っています。のんびりとしていてとても静かな風景です。
そのうち空模様が怪しくなり、池の色が灰色に沈み始めてきました。
雨が降ってきました!
ぽつぽつと降り出した雨は次第に勢いを増していきます。人々はいそいそと木陰に避難し、赤レンガの建物と緑の芝生は雨に濡れ次第にその色彩を濃くしていきました。
しっとりと濡れたバゲルハットのモスク群。その姿は晴れのときよりも更に美しいのではないかと思えるほど。
雨に濡れたモスジットは、風景にとてもよくマッチしていました。
旅行時期:2003年9月
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