「セントラルステーション」
ヴァルテル・サレス監督の1998年の作品、ブラジル映画です。
作品は、第48回ベルリン国際映画祭金熊賞・銀熊(主演女優)賞・審査員特別賞、第56回ゴールデングローブ賞外国語映画賞などを受賞しています。
舞台は、カーニバルで有名な「リオ・デ・ジャネイロ」です。
荒んだ心の代筆屋ドーラと身寄りを亡くした少年ジョズエの出会い
貧富の差が激しく、盗みや犯罪に手を染めなければ生きていけない人が大勢いるといわれる大都会リオ・デ・ジャネイロ。
そのリオの中央駅で、中年女性ドーラは代筆屋をしていました。
代筆屋とは、文盲の人の代わりに手紙を書いてあげるという職業。文盲率の高いブラジルならではの職業です。
しかし、ドーラはあまり良心的な代筆屋とはいえませんでした。
手紙は1レアルで請け負うのですが、彼女はお金をもらうばかりで手紙を投函しようとはしないのです。
そんなドーラの様子に友人は苦言を呈しますが、彼女は悪びれる様子もありません。
そんな彼女の元にある日、母と子どもがやってきて代筆を頼んできました。
遠くにいる別れた夫に「子供が会いたがっている」という手紙を出したいというのです。
仕事を請け負うドーラ。
しかし、ここで悲劇が起こってしまいます。
駅前で、母親が車に撥ねられて死んでしまうのです。
ひとり残された息子のジョズエ。
哀れに思ったドーラは、彼を自分の家に連れて帰ることにしました。
だけど、ドーラにしても、ジョズエを連れて帰ってもどうしたらいいものかわかりません。
そこで、彼女は、子供を引き取るという業者に、いくらかの報酬と引き換えにジョズエを手渡してしまうのです。彼女はその金でテレビを買いました。
それを聞いた友人はドーラを詰ります。
あれは、子供の臓器売買の業者なのよ!と。
さすがに良心が咎めたドーラは、ジョズエを取り戻す決心をします。
そして、ジョズエを救い出したドーラは、彼と共に父親を探す旅に出ることになるのです。
ブラジルの原野を行く旅。次第に浄化されていく心、生まれ始める絆。そして、別れ。
ブラジルの赤茶けた雄大な原野をドーラとジョズエはバスで移動していきます。
始めは悪態ばかり吐いているドーラですが、様々な土地を通り、人に出会いながら旅を続けていくうちに次第に何かが変わり始めていきます。
そして、ドーラとジョズエの間に、いつしか心のつながりが生まれ始めてくるのです。
父親に会うことはできなかった二人ですが、彼らはジョズエの兄を見つけることができました。
初めて出会う兄弟たちでしたが、彼らはジョズエを快く受け入れてくれます。
それを見たドーラは、翌朝、眠っているジョズエを残し、静かにその場を立ち去るのです。
自分の役目は終わったとばかりに、別れを告げることもせず・・・。
父探しの旅の途中、村の祝祭の時、二人は神父さんと一緒に写真を撮りました。
万華鏡のように穴を覗くと写真が見える。そんな写真が2人それぞれの手元に渡されました。
ジョズエの元を立ち去ったあと、ドーラは荒野の片隅でその写真を覗き込みます。
不意にドーラがいなくなってしまったことに悲しむジョズエも、その写真を覗き込みます。
涙を流す二人。
もう二度と会うことはないのかもしれない。
だけど、二人の心の中には、お互いの存在がいつまでも残り続けることでしょう。
素晴らしい映画でした★
キャスト
ドーラ :フェルナンダ・モンテネグロ
友人エレーネ :マリリア・ペーラ
ジョズエ :ヴィニシウス・デ・オリヴェイラ
ジョズエの母アンナ :ソイア・リラ
トラックの運転手セザール :オトン・バストス
駅の男ペドロン :オターヴィオ・アウフスト
人身売買の女ヨランダ :ステラ・フレイタス
ジョズエの兄イザイアス :マテウス・ナシュテルゲーレ
ジョズエの兄モイゼス :カイオ・ジュンケイラ
スタッフ
監督 :ヴァルテル・サレス
プロデューサー :アルテュール・コーン マルティーヌ・ド・クレルモン=トネール
製作総指揮 :エリザ・トロメッリ リリアン・ブリムバウム ドナルド・ランヴォ
脚本 :ジョアン・エマヌエル・カルネイロ マルコス・ベルンステイン
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